JPR(日本国際救急救助技術支援会)の阿部隊員が、2026年10月17日(土)から18日(日)にかけて、フィリピン共和国パラニャーケ市のボランティア消防組織「Batang90s Moonwalk Fire Rescue Volunteer」に対する第5回消防技術協力を実施しました。
今回の活動では、エンジンカッターの搬入と取扱・維持管理指導、梯子を使用した進入・救出訓練などを実施しました。また、訓練終了後には現地で発生した火災現場への出動に同行し、フィリピンの消防隊員が直面する活動環境や課題を確認する機会にもなりました。
JPRでは、資機材の提供に加え、現地消防隊員が自ら技術を習得し、安全に活動を継続できる体制づくりを重視しています。
エンジンカッターの搬入と取扱・維持管理指導
今回の活動では、前回の訪問時に搬入できなかったエンジンカッターを、輸送上の調整を経て無事に現地へ持ち込むことができました。エンジンカッターは、金属やコンクリートなどの硬い材料の切断に用いられる動力工具であり、消防・救助活動における資機材の一つです。
活動初日には、現地消防隊員に対してエンジンカッターの取扱方法や維持管理要領について説明を行いました。また、今後の使用に伴う故障や部品交換などを想定し、あわせて搬入した補修部品についても説明しました。
消防資機材は、配備するだけで十分に活用できるものではありません。安全な取扱方法を理解し、適切な点検・整備を継続することが重要です。今回の技術指導は、現地の隊員が資機材を継続的に活用するための基礎づくりとなりました。
梯子による進入・救出訓練を実施
今回の活動では、当初使用を予定していた訓練建物が改装され、訓練施設として使用できない状況となっていました。そこで、現地消防関係者と協議を重ね、別の消防ボランティア団体が保有する建物を借用することができました。
活動2日目には、この施設を使用して梯子による実技訓練を実施しました。訓練では、梯子の設置・固定方法、2階部分への進入方法、梯子を利用した要救助者の救出要領などを確認しました。
高所での消防・救助活動では、技術の正確さに加えて、転落などの事故を防ぐための安全管理が欠かせません。今回の訓練では、グローブや安全帯などの個人用防護装備(PPE)の重要性についても説明し、隊員自身の安全を確保しながら活動することの必要性を共有しました。
また、今回使用した建物については、今後も継続的に訓練施設として活用できる見通しが得られました。実践的な訓練を繰り返すことのできる場所が確保されたことは、今後の消防技術協力を進めるうえで重要な成果の一つです。
実際の火災現場への出動に同行
全日程の訓練終了後、ムーンウォーク地区で火災が発生し、Batang90sの消防隊が出動しました。JPR側も現場への出動に同行し、現地消防隊の活動状況を確認しました。
火災現場は住宅が密集する地域にあり、消防車両の進入や活動スペースの確保が難しい環境でした。現場では、政府の消防機関を含む10数隊の消防隊が活動しており、多数の消防車両や隊員、住民が集まっていました。
特に印象的だったのは、幅約1メートルの狭い路地に消防ホースを延長しなければならない状況です。限られた空間でホースを延長・管理することは容易ではなく、建物が密集する地域特有の活動上の難しさが確認されました。
また、建物の屋根や隣接建物から放水する活動も行われており、現地の建物構造や道路事情に応じた消防活動の実情を知ることができました。こうした環境では、消防隊員の安全確保、各隊の連携、消防用水の効果的な使用などが重要になります。
今回の火災現場への同行は、通常の訓練だけでは把握しきれない現地消防の実情を理解する貴重な機会となりました。
現地の活動環境から見えてきた課題
今回の訓練と火災現場での活動確認を通じて、今後の技術協力に向けた課題も明らかになりました。その一つが、個人用防護装備(PPE)の整備と適切な着用です。
現地で使用されている防火衣、防火ズボン、グローブ、防火長靴などには、損傷や劣化が見られるものがありました。また、屋根上などの高所で活動する際にも、装備の着用や転落防止に関する安全管理が重要であることを確認しました。
さらに、建物の損傷部分や障害物に対応するための破壊器具、限られた水量を考慮した放水方法についても、今後検討すべき課題として挙げられています。これらは現地消防隊員の努力だけで解決できるものではなく、保有資機材、建物構造、道路環境、活動体制など、さまざまな条件が関係しています。
JPRでは、現地の活動環境や実情を尊重しながら、安全性と実効性の両面から技術協力を進めていくことが重要だと考えています。
継続的な消防技術協力に向けて
今回の第5回消防技術協力では、エンジンカッターの搬入と取扱指導、梯子を使用した進入・救出訓練を実施するとともに、実際の火災現場に同行することで、現地消防活動の課題をより具体的に把握することができました。
また、継続的に使用できる訓練施設の確保や、現地での資機材維持管理・技術指導の体制づくりについても前進がありました。
国際消防技術協力において重要なのは、一度の訓練や資機材支援で活動を終えることではありません。現地消防隊員が学んだ技術を繰り返し訓練し、自ら資機材を維持管理しながら、地域の実情に合った消防・救助活動を継続できるようになることが大切です。
JPRは今後も、Batang90s Moonwalk Fire Rescue Volunteerとの継続的な協力を通じて、現地消防隊員の安全確保と消防・救助対応能力の向上に取り組んでまいります。







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